連載● - 関西TLOの経営改革
第5回
次のステージに向け国際展開など強化
経営改革により着実に実績を上げてきた関西TLO。さらに飛躍するため、今後5年間で、国際展開、専門的な高度人材育成などに力を入れる。
第1~4回までは、関西TLOがどのようにして倒産寸前の経営不振に陥り、どのような経営改革を行ったかについて述べた。経営改革を断行したおかげで、少しずつであるが、技術移転の実績は着実に上がってきている。しかしながら今後、関西TLOが真の技術移転プロフェッショナル集団として、技術移転実績を飛躍的に向上させ、関西TLOの経営を成長軌道に乗せるためには、あらゆる面でレベルアップを図る必要がある。 関西TLOでは2015年までの5年間の中期経営計画を策定した。これは役員、社員が約半年間をかけて議論し、次の関西TLOの進むべき道を示したものだ。名付けて「NEXT関西TLO2015」。最終回は、さらなる進化を目指す関西TLOの将来構想「NEXT関西TLO2015」についてご説明する。
「新しい価値を創造して、世界を熱くする」 これがわれわれの策定したビジョンである。京都大学、和歌山大学、京都府立医科大学、奈良県立医科大学などの研究成果を国内外を問わず広く発信し、日本の大学の研究成果の素晴らしさを世界に知らしめたい。また、関西TLOが経営改革以降、実践してきた「知的財産マーケティングをコアとし、泥臭く営業する」をベースにし、大学の発明の事業化プロデュースを行い、数多くの大学発のビジネスを仕込んでいきたい。これを実現するために、関西TLOは2015年までに、国際展開、提携大学の拡大、人材育成の3点について、重点的に取り組む。 1.国際展開技術移転の主戦場は、欧米である。これまでの国内企業を中心としたマーケティング活動から、グローバルなマーケティング活動に重点を置く。これまでのわれわれの経験から、海外企業は一般的な日本企業とは異なり、良い発明は大学からライセンスを受けることが根付いており、ライセンス可否に関して意思決定が早い。このため日本の大学の発明をいち早く事業化に結び付けてくれる可能性があると考えている。今後は日本企業へのマーケティング活動を重視しながらも、グローバルなマーケティング活動にも力を入れていく。 さらに、外の大学技術移転機関(TLO)との連携を積極的に進める。2011年6月、第1号として、Aalto University(フィンランド:旧ヘルシンキ工科大学)との業務提携契約を締結した。この契約は、Aalto Universityの発明を日本企業に紹介するとともに、関西TLOの提携大学の発明をAalto Universityの有する企業ネットワークを活用して海外企業に紹介するというものだ。 国内外のTLOと密接に連携することにより、お互いの保有する特許をパッケージ化して企業に紹介することができ、また、お互いの企業ネットワークを活用することが可能となる。さらに、企業ニーズに対して、提携先TLOから関連する発明を探し出し、最適な発明を紹介することができるようになる。現在、Aalto Universityのほか、スウェーデン、ニュージーランド、ハンガリーなどの大学技術移転機関(TLO)と業務提携交渉中である。おそらく半年~1年後には、技術を探している日本企業に――国内外の提携TLOを通じて関連する発明をリストアップし――最適な発明を紹介できるような体制が構築できると考えている。 2.提携大学の拡大関西TLOは、現在、京都大学、和歌山大学、京都府立医科大学、奈良県立医科大学と知的財産マネジメント業務において、独占的な業務受託契約を締結している。さらに強固な提携関係を構築するために、上記大学による関西TLOへの出資(株式取得)等を進める。また、技術移転機関(TLO)として経営を安定させ、技術移転のプロ集団として生き残るためには、ある一定数以上の発明を取り扱う必要がある。このため、弊社社員の成長度合いを鑑みながら、2015年までにさらに、1~2大学との独占的な業務受託契約締結を目指す。 3.人材育成関西TLOがこれからさらに拡大、発展していくために最も重要となるのが、「人」である。社員の成長こそが関西TLOの発展である。これまでの関西TLOの求める人材は、「すぐ動ける!元気!体育会!ストレス耐性!」の4拍子のそろった人材であった。これは組織を変革する上で必要な人材であり、経営変革をする上ではかなり機能した。しかし、今後関西TLOが真の技術移転プロフェッショナル集団として発展していくためには、気合いと根性はもちろん重要だが、それだけでは限界がある。 今後は国際技術移転ビジネス人材、研究を事業化するビジネスプロデューサーとなりうる人材が必要となり、技術移転人材の専門化、プロフェッショナル化が進むと予想している。また近い将来、海外の技術移転機関(TLO)のように、Ph.D、MBA取得者がライセンス活動を行うようになるだろう。 関西TLOが真の技術移転プロフェッショナル集団として発展していくためには、私を含め、関西TLOの社員全員が、常に高い目標に挑戦し続けなければならない。挑戦し続けることで人は大きく成長し、関西TLOの発展の原動力になると考えている。これまで、関西TLOが重視してきた「泥臭く営業する」をベースにしながら、技術移転の専門化、プロフェッショナル化を進め、2015年までに真の技術移転プロフェッショナル集団に変革する。そのために、できる限り人材育成に投資を行い、社員全員が生き生きとやりがいを持って技術移転活動を行い、持てる力を最大限に発揮して成長してくれるような環境をつくっていきたいと考えている。 本連載を執筆するにあたり、2006年10月から実施した経営改革を振り返り、あらためて自分を省みる機会をいただいた編集部の皆さまに感謝申し上げます。経営改革に着手したとき、さまざまな問題や困難にぶち当たり、八方塞がりの状態に何度も陥った。そんなとき多くの人に励まされ、助けていただいた。関西TLOの経営改革は、決してわれわれ自身だけで行ったものではない。色々な方々に助けていただいてここまでくることができた。経営改革断行から5年が経ち、やっと技術移転機関(TLO)としてのスタートラインに立てた思いだ。これからは、大学の研究者の先生方、大学知財本部の皆さん、企業の皆さんから、「関西TLOと仕事をして本当に良かった」と心から言っていただける存在になりたいと考えている。 今の関西TLOは、最高の人材がそろっている。若手、中堅、ベテランともに、それぞれ与えられた役割を理解し、志が高く、熱いハートを持った素晴らしいチームだ。私はこのチームで技術移転事業を必ず成功させたい。私たちは本気だ。同志社の創立者、新島襄の遺言に、「倜儻不羈(てきとうふき)」という言葉がある。信念と独立心に富み、才気があって常軌では律しがたいという意味だ。関西TLOメンバーの個性を十分に発揮し、型にとらわれず、伸び伸びと自由に思い切ってやる、「倜儻不羈たるTLO」を目指して日々活動していきたい。 (本連載は今回で終わります) |